レーザードップラー振動計とコウモリの話

 突然ではありますが、振動を計測したい、と思ったことはありますでしょうか。

 

 普段の生活では振動を測りたいなどと考えることはほとんどないと思います。しかし、製造業、特に研究開発に関わっている方々の中には、業務上振動を計測しなければならない、ということがあると思います。

 

 では、振動計測はどのように行われるのでしょうか。

 

 振動を計測する方法として、簡単に言うと、3つの方法が挙げられます。

 

 それは、

 

 ①変位を計測する

 ②速度を計測する

 ③加速度を計測する

 

という方法です(方法と言ってしまうと語弊があるかもしれない!と思いましたが、他に適切な言葉が思い浮かばなかったのでご容赦ください)。

 

 振動を計測する、って言ってんのに、なんで変位やら速度やらを計測するんだ!と思われるかもしれません。では、そもそも振動とは何でしょうか。

 

 振動とは、簡単に言うと、上下左右に繰り返し移動する現象、とでも言えるでしょうか。つまり、重要なことは、どれくらいの量の繰り返し移動をしているのかが分かることです。そのため、それが分かりさえすれば、計測する指標は何でも構わない訳です。そして、現在、一般的に振動を計測する指標として用いられているのが、上記の3つという訳です。

 

 では、その3つについて、それぞれ説明をしたいのですが、速度と加速度については話がやや面倒になるため、またの機会に致します。今回は、①変位の計測についてお話したいと思います。

 

 変位を計測するというのは、どれくらい動いているのかを計測する、ということです。例えば、バネが上下に振動している様子を想像してみて下さい。そのバネがどのような振動をしているのか、と聞かれた場合、どのように答えればいいでしょうか。

 

 振動を表現する要素として、振動のスピード(どれくらいの速さで上下に移動しているのか)と、振動の大きさ(どれくらいの距離だけ移動しているのか)が、簡単に思い浮かぶのではないでしょうか。それぞれ、いわゆる周波数と振幅に対応するわけですが、振動の大きさを計測する、ということが、つまり変位を計測する、ということに対応している訳です。

 

 では、実際の現場ではどのように変位を計測しているのでしょうか。

 

 よく使われる方法は、レーザーを使い、ドップラー効果を利用して変位量を計測する、というものです。「レーザードップラー振動計(変位計)」と呼ばれる製品がこれにあたります。メーカーとしては、小野測器やポリテック・ジャパンなどが有名かな、と思います。

 

 レーザードップラー振動計の仕組みはごく単純です。振動を計測したい対象物にレーザーを照射し、その反射光を計測します。そして、ドップラー効果を利用して、対象物の速度を計算します。最後に、速度を積分することで、変位量を算出する、という仕組みになっている訳です。

 

 ここで大切なことは、対象物が鏡のように光を全反射してしまう場合、この方式での計測ができない、ということです。それは、計測の原理上、照射したレーザーを乱反射してくれないと、受光部でうまく反射光をとらえられないためです。

 

 実は、これと似たようなお話を最近耳にしました。それが、タイトルにあるコウモリです。コウモリと言えば、暗い洞窟に生息しているというイメージがあると思いますが、最近では都市部に迷い込んでくるコウモリもいるそうです。

 

 そして、都市部に迷い込んだコウモリに、不思議な現象が多発しているそうです。それは、コウモリが高層ビルに激突する、という現象です。

 

 なぜ、コウモリはビルに激突してしまうのでしょうか。それは、コウモリの障害物検知の方法に原因があります。コウモリは、超音波を発信し、その反射を感知することで、周りの世界を見ています。では、ビルのような超音波を完全に反射してしまうものがあった場合、どうなるでしょうか。コウモリは超音波の反射を感知できず、反射がないということは、そこに障害物は何もない、と判断するでしょう。それによって、コウモリはビルに激突してしまうのです。

 

 振動計測の話から、全く別のコウモリの話になってしまいましたが、まとめると、振動の計測にはレーザーを使った方法が使われているよ!ということです。

 

 最近では、自動運転車にもレーザー距離計のようなものが採用されているようです。レーザー恐るべし。class4のレーザーで悪戯しないようにね。危険ですから。